第5話
「うおりゃーー!!」
戦線に戻ってきたウィルがトカゲの背中に大きく剣を振り下ろした。
だが怪我の影響もあってか、思うように力が入らず、トカゲの硬い皮膚に少し傷がついた程度しか与えられなかった。
「いけぇ!!」
リリが腕とブーメランをつないでいるハルマオーラをうまく利用し、遠隔操作してトカゲの後頭部に当てた。
しかし、トカゲには大して問題ない威力だったのか、全く動じなかった。
その後も全員攻撃を続けるが、硬い皮膚から全く決定打が生まれず、時間だけが過ぎていった。
「カレッシュ、何か弱点か何かわかったか?」
先ほどからそれを探っているように攻撃を仕掛けているカレッシュに、タックが聞いた。
「あの硬い皮膚がやっかいね。それにあの図体だから、胴体を攻撃するよりも首から上を攻撃した方が効果的ね。」
「だけど、そこにもあの皮膚が・・・。ライトチャージバーストでもあの皮膚を貫通できないか?」
「ムリ。コミットさんの『天地革命』ぐらいの威力のある技じゃなきゃ・・・。」
「あれぐらいか・・・。ルイ、『天地革命』ぐらいの威力を出せる技はないか?」
ちょうどその会話中に近くに寄ってきたルイにタックが聞いた。
「『天地革命』?なんだそれ?」
「『天地剣』四大奥義の1つだ。知らないか?」
「知らない。どれぐらいの威力なんだ?」
「えぇと・・・100メートル先の船2隻を沈められるぐらいのだ。」
「船2隻ねぇ・・・って、船2隻!?そんなのムリに決まってるだろ!?」
ルイにとってはあまりにも常識はずれな威力に、思わずツッコンだ。
「ルイが驚くということは、ウィルとリリィでもムリなのか?」
「多分できないと思うぜ。さっきウィルは尻尾をぶった切れたけど、トカゲの尻尾なんて、1番切れやすい場所だしな。」
「しかもウィルはさっきの怪我もあって、力を100%出せない。」
ルイの説明に、カレッシュが補足した。
「じゃあ、他に方法はないのか?」
タックがカレッシュに問うた。
「・・・あるけど、難しいわよ。」
「なんだ、それしかないならやるしかないぜ。」
ルイが聞くと、カレッシュはリリの方に体を向けた。
「リリ、『雷』の具現化をしな!!」
「え!?」
いきなり受けたカレッシュの注文に、リリは驚いた。
「あのトカゲの体全体に、思いっきり強力な電撃をくらわしてやるのよ!」
「そんなのムリよ、時間がかかりすぎるわ!」
そういうと、ウィルがリリの前に立った。
「何か倒せる手があるようだな、時間が欲しいなら俺がそれを稼いでやるよ。」
するとリリィもウィルの隣に来た。
「そぅいぅこと、だから存分にやっちゃって。」
「二人とも・・・。わかったわ。」
リリはそう言った後、一気に後ろに下がり、ブーメランを構えて集中し始めた。
「よし、時間を稼ぐぞ!!」
タックの一声と共に、5人全員トカゲの顔目掛けて攻撃を仕掛けた。
そうすることにより、注意がそこに行きやすくなるからである。
トカゲは悲痛の叫びと共に足踏みをして暴れるが、そこから大きく動こうとはしなかった。
代わりに、首を大きく上下左右に動かすため、5人の狙いが定まらないばかりか、これに直撃して度々吹き飛ばされた。
「この、少しはおとなしくしろ!!」
あまりにも激しく動くトカゲにしびれを切らせたルイは、まだ空いている左目を思いっきり斬りつけた。
トカゲはこれにより両目を塞がれたため、さらに激しく暴れ始めた。
「リリ、まだか!?」
そう長く引き止めていられないと予感したタックが聞いた。
2、3秒の沈黙の後、リリが急にブーメランを投げる態勢に入った。
「いくわよ!!」
そう叫ぶとともに、リリはブーメランを思いっきり投げた。
ブーメランはリリの操作により、首から胴体にかけて軌道が体中に絡まるように移動し、リリの手元に戻ってきた。
「みんな、離れて!!」
まだトカゲの気を引こうと近くにいた5人に、リリが警告をした。
「わ、わかった。」
何か起きる、そう感じた5人はすぐさま離れた。
「いくわよ、『エレクトリック・フィニッシュ』!!」
リリはブーメランを力一杯握り締めた。
すると先ほどブーメランが通った軌道が急に電気に変わり、それに触れていたトカゲは思いっきり感電した。
「グギャーーーー!!」
トカゲはこの感電による悲痛の叫びを発した。
「やっぱり、いくら皮膚が硬くても、電気は通せるのね。」
カレッシュはこの光景をみてニヤっと笑いながら言った。
だが、これで終わらなかった。トカゲはよろけはしたものの、倒れるまでにはいかなかった。
「あれを喰らって、まだ立っていられるのか!?」
あまりのタフさに、ルイは驚きを隠せなかった。
「だけど今のでかなり弱っているはずだ、一斉にかかれば倒せ・・・ウッ。」
剣を構え、一斉攻撃を促していたウィルが、急に崩れ落ちるように倒れた。
「ウィル!」
いきなり倒れたウィルに全員が驚いている中、リリィが前に出てウィルの傷などを見てみた。
「血液不足による貧血です!早く傷口を治療しないと、命の危険が・・・!」
リリィが慌てながら言った。
「じゃあ、早いとこ5人であいつを倒さなきゃな・・・。」
「いや、4人だね。」
ルイの言葉に、カレッシュが横入りした。
「どういうことだ?」
「リリを見てみな。」
そう言われて、全員リリの方を見た。
4人から離れた場所で、リリが膝を床につけ、かなり疲れた様子で息切れしていた。
「あれだけ大規模な具現化をしたんだ、体力もかなり消耗するはずだよ。」
カレッシュがリリの様子について説明した。
「とにかく、このままじゃウィルがヤバイ。早いとこ終わらせよう!」
「オーケー!!」
そして4人はもう一度トカゲに攻撃を仕掛けていった。
まずカレッシュがトカゲの首に二丁の拳銃で連射して放った銃弾が最初に到達した。
すると、今まで何も傷がつかなかったトカゲの皮膚が、銃弾の当ったところだけ見事にへこんだ。
続いて、トカゲに真っ先に到達したルイが長剣でトカゲの顔を斬りつけた。
先ほどまで全く傷をつけることの出来なかったルイの斬撃も、まるで豆腐を切る様にスパッとトカゲの皮膚を刻んだ。
「チャンスだ!今のリリの具現化した電気の熱で、トカゲの皮膚が熱せられて脆くなっている!」
カレッシュがトカゲの近くに寄った3人に叫んで伝えた。するとカレッシュは拳銃の片方を納め、一つの拳銃を両手で持った。
その間に、リリィが盾でたった今カレッシュがへこませた部分を集中的に攻撃し始めた。
次第にそのへこみはドンドン深くなっていった。
「リリィさん、離れて!」
性格が戻ったカレッシュがリリィに言った。リリィは反論せずにそこをどいた。
「チャージライトバースト、シュート!!」
カレッシュの拳銃の銃口から大きな光の銃弾が、トカゲのそのへこんだところ目掛けて離れた。
銃弾はそこに見事命中し、ついに皮膚が剥がれ落ち、そこから血が噴き出し始めた。
「とどめだ!!」
そう言ってタックとルイがほぼ同じタイミングでトカゲのその血が噴き出す部分へ飛び掛った。
「おらあああ!!」
「テック流槍術、龍火槍!!」
そして二人はまたほぼ同じタイミングで、ルイは長剣でそこを十字に切り刻み、タックはそこを突き、それと同時に爆発、炎上させた。
「ギャアアアァァァァ・・・。」
トカゲはこの断末魔の叫びと共に、ついに倒れた。
「お、終わった・・・。」
トカゲが倒れたのを確認して、全員緊張から開放され、その場で尻餅をついた。
「・・・と、こんなことしてる場合じゃない、早くウィルをどこか治療できるところへ・・・。」
そう言ってルイは立ち上がろうとした。しかし、そこにいた者全員、男一人抱えて動けるほどの体力はもうなかった。
するとその時、入り口の方から何やら足音が聞こえてきた。
「大丈夫か!?」
そう言うなり現れたのはコミットであった。
後ろにはリー達の他訓練生もいた。
「コミットさん、ちょうどよかった、そこの人を治療してあげてください。」
「え?」
カレッシュが倒れているウィルを指差しながら言った。
「な、何があったか知らないが、どうやらこいつを倒せたようだな・・・。とにかく、プラドまで運ぶぞ。」
トカゲが倒されているのを確認して、コミットは訓練生を引き連れてウィルを運んでいった。
こうして、今回の戦闘は幕を閉じた。
第6話に続く